私の彼氏はクラスで一番、


「チャリ通なめんな」


ケラケラと笑う男の子たちに短く言い返した、鋭いセピア色が、ふと、しっとりと水を含む前髪の奥から、こちらを覗いて──


ぱちん。

一瞬だけ視線が絡み、でもすぐに解けた。私が、顔ごと目を逸らしてしまったから。


「どした? 七葉」


私の明らかにおかしい挙動に、里香ちゃんが首を傾げる。


「えっ、いやなんでも」

「何見てたん? あの集団?」


咄嗟に誤魔化そうとしたけれど遅くて、それまでの私の視線を辿るように、里香ちゃんも入口へと目を遣る。


それから、里香ちゃんは楽しげな声が飛び交う空間を眺めながら、感心したようなため息を吐き出した。


「相変わらずすごい人気。あそこだけでクラスの三分の一くらい集まってない?」

「あはは……」

「私からしたら、阿久津くんってめちゃくちゃ取っ掛りにくそうな感じの男の子にしか見えないんだけどね」


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