ほどけるいと。
キス,された…

自室でそっと自身の唇に触れる。

そう言えばのニュアンスで浮かんだ衝撃の事実。

もう温度も何も残ってないはずなのに,妙に温かく感じた。

時間が経てば経つほど,じわじわと実感する。



『したくなって』



て,何…?

キスなんて,全然したことない。

本当に,数回だけ。

何回目だって,変わらず,寧ろ重ねる毎に恥ずかしくなる。



「はぁ…落ち着こ」



普通だよ,普通。

だって私達は,もう付き合って3年目に入ろうとしてるんだから。

好きな,まんまなんだよな。

ころんと握ったシャーペンを回す。

流雨に貰って,無くしたくないからと2年生の時から家で使っているものだ。

どれだけ不安で,どれだけ悲しくて,寂しくても。

ずっと。

私は流雨を好きのまんまで,ちょっとずつ勝手に,確かに傷ついてる。

どこまで我慢すればいいのか,器用に分からないから。

シャーペンを,握り直す。



「今日はどんなシチュで……」



だめだ,今日は。

もう何にも考えられない。
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