猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



「本っ当気持ち悪い。どいつもこいつも顔しか見てないくせして。つーか顔だけ見て寄ってきてるんだったら、せめて自分も釣り合うように努力してから告れっての。あーうざいうざいうざい」



ぼそぼそとした声で続く独り言。

……今度は確実に聞き間違いじゃなかった。


文脈からして、『気持ち悪い』とか『うざい』ってまさか、さっき告白してきた女の子に対して言ってる?



驚いて顔を上げた私の目に映った柳沢くんは……

告白してきた女の子から受け取った手紙を、びりびりに破り割いていた。



「なっ……」



思わず声が漏れてしまった。

立ち上がった拍子に椅子を蹴ってしまい、がたっと音が鳴る。


やばい。



「……!誰?」



柳沢くんも、教室に自分以外の誰かがいたことに気が付いたらしい。

焦ったような声と共に振り返る。


だけど私は、柳沢くんがこっちの姿をとらえてしまう前に、全速力で走り出した。



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