自信家幼なじみが隠すもの

幼なじみの初恋




『なんだこのキノコは。網で焼いて食っちまうぞ』


 最初に桃と出会ったときに思ったこと。っていうか、面と向かって言った。


 母さんにげんこつを落とされたけど、別に反省はしていない。


 だって、俺は仲良くなりたかったのに、園田母の陰に隠れて俺と目も合わせやしなかったし。


 俺が名前を名乗ったってぴくりとも動かなかったんだ。


 じめじめと俯く、自分よりも小さな女の子。


 前も後ろもぱっつんと切りそろえられた髪の毛からも、キノコしか連想できなかった。


 ……こいつと仲良くできる気がしない。


 そう思いながらもじっと観察していると、向こうもようやくこちらを見る気になったのかそろーっと視線を上げていった。


 それから桃の雰囲気が変わったのは一瞬で。


『あ、おはなだ……!』


 公園帰りの俺がたまたま手に持っていたたんぽぽの花に気づくと、鈴のような声で喜んだ。


 春のうららかな日差しに照らされた、茶色の髪と透き通った瞳が俺の目に眩しくて。


『かわいいね』


 ぱぁっと、花にも負けない可愛らしい笑みを咲かせ、こちらへ向けてきたから。


『……かわいいな』


 顔が赤くなるのを隠せないままに本音を零してしまった。


 もちろん、数秒前に抱いていた予感なんて綺麗さっぱりなくなっていて。


 むしろ、ずっと仲良くしていたいって。もっともっと俺が笑わせてやるって。


 密かに決めた初恋の日だった。



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