【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
突然の試練

私のばあちゃんは3年前に亡くなった。

とても元気で明るくて身内である私と功太に厳しく、時には両親のいない私達を優しくいっぱい甘えさせてくれた。
大好きで私の自慢のばあちゃんだ。

そして、自慢のばあちゃんには独自の家訓というものが存在した。

これは功太が中学生の時、サッカー部の試合を自分のせいでボロ負けしてしまったことがあった。
その時、ばあちゃんが言ったのだ。

『辛いことがあった日はとにかくいっぱい食べていっぱい寝て、頭を空っぽにしなさいな。そうしたらまた明日の風が吹くってもんさね』

そうそう。こんなことも言っていたな。

私が小学生の時、道でうずくまっていた知らないおばあちゃんに付き添って病院まで連れて行ったことがある。

『晴、お前は良いことをしたね。年寄りは晴の何倍もの人生を見てきてるんだ。どんなことがあっても(ないがし)ろにせず助けるんだよ』

ばあちゃんの言葉はいつも思いたった時に発動される。だから思いつきで格言と言うほどではないのかもしれないけど、私の心の中に住み着くには充分だった。

──そう。だからこれは人助け。おばあちゃんに呼ばれたら行くしかないでしょ。まだ何の対策もないけどなんとかなる!

そう思いながら私は今、和風で趣のある大きなお屋敷の前に立っている。


──なぜ私が今ここにいるのか?それは小笠原さんと同居を始めた今朝方の話まで遡る──

小笠原さんが仕事に出掛けてからすぐに私のスマホが鳴ったのだ。登録されていない知らない番号。私は仕事関係ではないかと思い恐る恐る電話をとったのがいけなかった……。

「もしもし。香菜さんのお電話でしょうか?」

「あ?あ!……はい。あの─」
私はまだ慣れない本物の嫁の名前にすぐ反応ができなかった。

(わたくし)、拓実の祖母の珠子でございます。結婚式でお会いしました」

「おが!……いえ、拓実さんのおばあ様?」
──お、お、小笠原さんのおばあちゃん?!どうして私の番号。小笠原さんは教えるはずないし。

私の頭の中で結婚式から今までの出来事を急回転でフラッシュバックしてみた。
小笠原さんの周りで私の番号を知っている人物……


……あ。もしかして小笠原さんのお兄さん?
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