【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


休日の遊園地はとても混んでいて辺りは恋人同士もしくは家族連れがほとんどだ。他から見たら私達の関係も恋人同士に見えるのだろうか。

あっちのカップルは手を繋いで楽しそう。あ、こっちのカップルは彼氏が人混みの中、彼女の手を引っ張ってあげている。

── いいな─。なんかカップルばかり目に入っちゃう。せっかく来たんだから私も小笠原さんと楽しみたいのに。

当の本人は先へ先へと進んで行ってしまう。私はそれに着いていくのがやっとだ。こんな状況がしばらく続いた時、さすがの私もだんだんと腹が立ってきた。

「小笠原さん!!」

私が大きな声で小笠原さんを呼び止めたせいで、周りの人達も一斉に私の方を振り返る。

注目を集めた恥ずかしさから、私は咄嗟に小笠原さんの腕を取って強く引っ張りその場を急いで走り去る。

混んでいる中を走り抜けるのはなかなかの至難の技だったが、なんとか人が少ない場所を見つけ出すことができた。
でも私が全速力で手を引っ張って走ったせいで二人共すごい息切れだ。

「ハァ─、ハァ─……な、なんで急に走ったの、片桐さん?!」

「ファ─、ハァ……ご、ごめんなさい。なんか急に小笠原さんに腹が立って」

「へぇ?腹が……どうしたって?」

少しずつ呼吸が整ってきたタイミングで小笠原さんと向き合い、私は自分の腹が立った理由を伝えた。

「だって!小笠原さん、ここ最近ずっとよそよそしいし素っ気ないし、私また何かしちゃいましたか?! なにか不満があるなら直接言ってください。このままの状態はすごい辛いので……」

そう言うと、頭をクシャクシャとしながら小笠原さんは最後に大きく息を吐いた。

「あ──……そっか、そうだよな。一緒に暮らしてるのに機嫌悪かったら嫌だよね。ちょっと色々考え事をして……不愉快な思いさせてたら悪い」

エッ!と驚いてしまった……小笠原さんが突然頭を下げてきたのだ。
まさか頭を下げるとは思っていなかったから、その姿を見て慌てふためいた私はなにか違う話題をと急いで頭の中の情報網を駆けめぐる。

──あ!

「観覧車!漫画で観覧車に乗るカットがあって!観覧車乗りませんか? ……それにもういいですから頭上げてください」

ようやく頭を上げた小笠原さんは、視線を近くにあった観覧車に移し、見上げながら呟いた。

「そうだな。観覧車乗ろうか。俺も片桐さんに……伝えたいことがあるし」
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