【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
真相


──漫画コンテスト締切二日前・早朝5時。


辺りが少しずつ明るくなり部屋に朝日が差し込もうとする頃、私は「ンッ─!」と両腕を思いっきり上に突き上げた。

「終わった─!!」

何とか私の集大成でもある漫画を締切ギリギリに描き上げたのである。
描いている間は嬉しいことや悲しいこと、怒ったりと本当に色んなことがあったけれど、今思えば自分が一番成長できたんじゃないかと思う。

ハァ─と大きな溜め息を吐き、今から眠っても中途半端になってしまうと思った私は、リビングへ向かい珈琲を一杯飲もうとお湯を沸かし始めた。

“ガチャッ”

「──おはよう。片桐さん早いね……あれから(・・・・)、徹夜で漫画描いてたの?」

髪の毛クシャクシャであくびをしながら出てくる小笠原さんは、いつ見ても無防備過ぎて私は毎回可愛いと思ってしまうのだ。そして少しはにかみ、照れながら目線を下へ送って答える。

「おはようございます。ハイ! 何とかやっと完成しました。今日、打ち合わせもあるのでその時に持っていきますね」

「寝不足なら打ち合わせはまた今度にして、原稿は俺が持っていこうか?兄さん達にも日を改めて……」

「あ、いえ!あの、少しでも小笠原さんと一緒にいたいので……今日の予定はそのままで」

そう言った自分の言動に勝手に盛り上がり勝手に恥ずかしがり、茹でタコのように体が熱くなっていくのがわかる。
そんな私に小笠原さんはゆっくりと近づき、後ろから包み込むように腕を回すと意地悪気に私の耳元で囁く。

「まだ時間はあるし、昨日の続き(・・・・・)でもする?」

瞬間、私の脳裏には昨日の出来事が事細かくリプレイのように甦り、更に私の頭から湯気でも出てきそうな勢いとなってしまった。

そして後ろから小笠原さんの手が私の顔にそっと触れつつ、彼の口元へと引き寄せられる。

“カタンッ”

その瞬間、ポットが私達の邪魔をするようなタイミングで湯が沸いたぞ─という合図を出してきたのである。

小笠原さんと晴れて恋人同士になって何日か経つけど、時々二人の世界にどっぷりとはまってしまう。これが“恋人”という甘い関係の特権なのだろうか。

私達はお邪魔虫となったポットの微かな音で我に返り、お互い顔を反対方向へ背けてしまった。

「あ─、珈琲は俺が入れるから片桐さんは座ってて」

「ありがとうございます。あ、あの─、今日は18時に“喫茶店まちだ”で良かったんですよね?」

「うん、そう。今日は特に大きな予定もないし、たぶん兄さん達が先に来ていると思うから」

「……小笠原さん。大丈夫ですか?」

珈琲カップを私の方へ持って来てくれた小笠原さんは、手渡しと同時に私の唇に軽くキスをした。

「もう、片桐さんがいるから平気。何も気にしてないよ」

そう言ってニッコリ笑ったくれたのだった。
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