若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
しばらくすると、上質なシャツとイージーパンツに着替えた慶がリビングに戻ってきた。

手には小さな紙袋をひとつ持っていて、美夕は首を傾げる。

「おい、美夕。寝酒に付き合え」

「えっ……昨日も結構飲んだわよ? 毎日飲んだら、体に悪いんじゃない?」

「いらないのか? いいつまみがあるんだが」

そう言って、慶が紙袋を持ちあげる。

「今日はシャンパンを開けようと思ってる。合いそうなフルーツを買ってきた」

「フルーツ……?」

「ひとつ三万円のマンゴー」

「いただきますっ」

慶はキッチンに入ると、マンゴーをまな板の上に載せ、慣れた手つきで切れ目を入れた。

食べやすくカットされたマンゴーとシャンパングラスがローテーブルに並ぶ。

(……もしかして、毎日フルーツを食べているから、フルーツ好きと思われたのかしら)

朝は強引にフルーツを勧め、夜はドライフルーツ入りのドリンク。確かに美夕はここ数日、たくさんフルーツを食べている。

(ここで瑞々しい高級フルーツを買ってきてくれるなんて、本当にずるい)

ものでつられたようで、妙に悔しい。とはいえ、食べないなんて選択肢は存在しない。

美夕は観念してソファに座ると、シャンパンで乾杯した。

夫婦の晩酌は存外楽しく、気分よく眠りにつくことができた。


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