若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
ちょうどその頃、花柳の仮出所の話が持ち上がった。

勅使河原議員の不正を暴き、花柳を牢獄から解放してやりたいと願っていた慶だが、なんの手掛かりも得られていないことに不甲斐なさを覚える。

議員は疑い深く慎重、己の不正の証拠を残すような軽率な真似はしない。

しかし、恩師に無実の罪を着せたことを許すつもりもなかった。

(必ず、真実を暴いてみせる)

勧善懲悪を謳えるほど甘い世の中だとは思っていない。

だが、少なくとも自分の手が届く範囲だけは、ずる賢く生きるものが利益を享受するような、そんな歪みを葬りたい。

せめて美夕だけは幸せにしてやらなければ――慶はそんな焦燥に追い立てられていた。




< 180 / 254 >

この作品をシェア

pagetop