若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「なぜ、慶さんが鍵を……」

「俺が契約している家だ。鍵を持っていても不思議ではないだろう」

悪びれもせず返答する慶に、ただでさえ情緒不安定な美夕は、尊厳もプライベートもあったものではないと文句を言いそうになる。

しかし、慶には問いただすべき重要な問題がほかにもたくさん控えていたため、クレームを呑み込んだ。

「あなたはこうなることを知った上で、私をここに閉じ込めたのですね」

美夕の問いかけを無視して、慶はダイニングテーブルの前で足を止める。

手つかずのクロックムッシュとポタージュに目を落とし「食べていないんだな」とひと言、つぶやいた。

「……実家に帰らせていただきます。離婚がご希望でしたら、書面でお送りください」

乱暴に言葉を投げかけ玄関を出ようとすると、すかさず歩み寄ってきた慶に腕を掴まれた。

「実家については、お前の父親から任され、信頼できる管理会社を手配した。母親は退院次第、ホテルに避難させる。父親も拘留が解けたら合流してもらうつもりだ」

慶がすでに動いてくれていたことに美夕は安堵した。同時に、責めるように言い募ってしまったことを反省する。

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