さくらの結婚
「ねえ、こっち」
 
 さくらが僕の腕を引っ張り鏡の前に立たせた。

「どう見える?」  

 さくらが鏡に映る僕たちを見ながら、甘えるように聞いてくる。

「親子じゃないのか」
「花嫁と花婿は?」
「年が離れ過ぎだろ」
「じゃあ先生と生徒とか。いけない恋の末に結婚した二人なんてどう?」
「絶対にない」
「面白いシチュエーションだと思ったのにな」  

 さくらがつまらなそうに言う。
 さくらの言葉を聞きながら、ドキドキしてくる。さくらは一体、どういうつもりでいるんだろうか――。  
 本当に僕と結婚したいなんて思ったのだろうか。
 
 海浜公園での告白がよぎり、さらに僕を悩ませた。でも、次の瞬間にその悩みが吹き飛んだ。

「今何て?」  
 
 さくらをじっと見ると、さくらは「結婚したい人がいるの」と口にした。
「安心して。一郎の事じゃないよ」と、さくらはクスクスと笑った。
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