スキナダケ
「ママ」

「んー」

たった一杯なのに、先のアルコールがよほど回ってるのかママの目は虚ろだった。

「さよなら」

「ん…え…」

「なんでもない」

ハナはずっとママの顔を見てた。

漫画みたいに、スイッチが切り替わるみたいにグリンって白眼をむいたママは喉元を押さえたり掻きむしったりしながらソファから転げ落ちた。

「ア…っ…ァグッ……ウ…」

口の端から泡と血が一緒に流れていて、動物みたいな呻き声を上げながらママはジタバタともがいた。

「ハッ…ハナ……ァ…ア……か…ぐ…」

掻きむしった首は爪痕と、血が滲んでて、顔も泡と血でグチャグチャ。

綺麗だったママの面影はない。

「か………ぐ…ァッ…」

「ママ、苦しい?」

「がッァア…ヒッ…」

「ママ、悔しい?」

「ィア…グッ…ガ…ッア…」

「ママ…」

「…」

「ママ」

最期までママはハナの本当の名前を呼ばなかった。

可愛い可愛いハナちゃん。
最期まで、ハナはママの大切なアクセサリーだった。

香水とアルコールのにおいが充満する部屋で、母親の遺体を目の前にしても罪悪感の一つも浮かばない。

ママがハナを心から愛していなくて良かった。

ハナが本当に大切な物を選べて良かった。

そうだよね。

夕海。
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