【ダーリン(仮)闇堕ち防止計画】前世:聖女&聖竜の飼い主、今世:こっ恥ずかしい二つ名(鮮血の魔女)冒険者&魔竜と古竜の飼い主&一途な悪女です

2.悪の大魔女へのターニングポイント1

 ダーリン(仮)と初めて会うより、もっとずっと前のある夜。
私は不意に未来を夢に見たの。
これがまず1つ目の人生のターニングポイントだったわ。

 夢ではね、ダーリン(仮)は今日この日、ここで瀕死の重症を負うの。

 パーティーは彼以外、無惨な遺体と成り果てたわ。
とっても痛ましい遺体よ。
そしてそれはわざと痛めつけられたものだったの。

 なぜなら刺客達の痕跡を消して、魔竜によって殺されたように見せかける為だから。

 ダーリン(仮)の傷はとっても深いものだったわ。
もちろん体にだけじゃなかったわ。

 顔!
クールでビューティーな顔にもよ!!!!
そこ大事!

 そうして刺客達に追い詰められ、死に瀕する彼に何者かが囁くの。

 卑怯者達に陥れられ、仲間を失い悔しくないのか、と。
復讐の為に我を受け入れろ、我と共に()()を滅ぼせ、と。

 囁いたのは、討ったはずの魔竜。

 絶望と憎しみに駆られたダーリン(仮)は頷いたわ。

 はい、そこで疑問に思っていただけたかしら?

 この場合滅ぼすのは刺客とか、その依頼主とかっていう限定的な対象なんじゃないのかって。

 何故にじ・ん・る・い?!

 ほらほら、言われてみれば不思議でしょう?
何故そんな大仰な範囲にってなっちゃうわない?

 だって復讐はともかく、仲間を殺されたから人類を滅ぼす?
おかしいじゃないかって話でしょ?

 だけど頷いたダーリン(仮)は不味そうな魔竜の血肉を食み、一時的に仮死状態になったわ。

 私ならもっと良いお肉食べさせたのに!
案外食あたりで仮死状態になったんじゃないかしら。

 まあそれを見た刺客達は依頼主にパーティーの全滅を報告したでしょうね。
夢でそのシーンはなかったから憶測だけれど。

 そして野晒し状態だった傷だらけの彼の体は、いつの間にか大地の亀裂に転移して黒い繭に包まれた。
この中で3年かけて魔竜と一体化していくの。

 そうして3年後、彼は魔竜王として孵化したわ。
姿形はそのままに、漆黒の髪と瞳となって。

 孵化した瞬間の彼のすっぽんぽんたるや・・・・まさに芸術作品!
未だに思い出すと鼻血が・・・・。
へへへへへへへへ・・・・。

 コホン。

 魔竜王となった彼は自身の生家である公爵家を、そして新たに王座に就いた新王が収める祖国を滅ぼし、今度は世界を滅ぼさんとする。

 さてさて、ここで少し前の何故人類滅亡を了承したのかに戻すわね。

 まず魔竜討伐の日、満身創痍ながらも何とか討伐し終えた彼らパーティーを直後に襲撃した刺客達。
それを差し向けたのが、彼の名ばかりの家族と当時王太子だった新王なの。

 ダーリン(仮)は公爵が妾に産ませた子供だったわ。
母親は平民だったけれど、公爵家当主だった父親は母親に癒されて相思相愛だったんですって。

 しかも彼の母親は彼が6才で急死。
父親は当然のように愛する女性との子供を引き取って()()()()

 これには私としては同情するわ。
もちろん彼にもだけど、何より継母となった公爵夫人と2人いた異母兄達によ。

 父親は一国の公爵家当主だし、親として引き取るのは、まあわからなくはないわ。

 だけど普通に考えればその子は不義の子供よ?

 ただでさえ公爵夫妻の夫婦仲は冷えきってたせいで、彼にとって頼りのはずの父親は何かと留守がち。
彼の母親が生きてる時はそっちに寝泊まりして帰らなかったし、彼を引き取ってからもわざとかのように仕事に精を出して結局帰らないわけ。

 そんなクソ旦那が他所でこさえた子供と、プライドの高い夫人や兄達の邸で過ごす時間が多くなればどうなるか。

 はい、児童虐待の開始。

 別に夫人や兄達が悪いかって言えば、私はそうは思わないの。
冷たい?
まあ否定はしないわよ。
だって今の私は悪の大魔女だもの。

 でもね、自分達の家庭ぶっ壊した女の息子が、貴族の中でもトップクラスの公爵家の令息になって、面白いなんて酔狂な心情になると思う?

 なるわけないじゃない!

 そりゃ積年の恨みとばかりに飯抜き、殴る蹴るの暴力だってふるっちゃうわ。
常識としてはどうかと思うけど、人としてはまともな反応じゃないの?

 もちろん虐待はね、ダメ、絶対。
彼は悪くはないわ。

 だけどあちらの立場じゃそんな子供可愛くないし、愛する気になれないのも責められないでしょ?

 私は綺麗事言うつもりないし、性善説派じゃないもの。

 夫の行動は夫人からすれば女としても、ハイクラスの貴夫人としても、プライドや面子をズタズタに引き裂くものだわ。

 それにいくら彼が平民レベルなら品があるように育てられてたって、結局は生まれながらに厳しく貴族教育を施された異母兄達には劣るわ。
そんな中途半端な庶子は何したって、生粋の公爵家のお坊っちゃんの癪にしか障らないものよ?

 何貴族の真似事してんだよ、テメーってやつよね。
しかも控え目に言っても自分達の父親の愛情を一人占めしてた庶子なんだもの。
手加減無しよ。

 結果馬鹿にさるだけで、家族として受け入れられるはずもないじゃない?

 そもそもこの国は男社会、身分社会なのよ。
当主の父親がちゃんとフォローしないなら余計無理ってものだわ。

 大体、当主で大黒柱の俺が愛した平民の女との子供だ。
だから俺の家で育てるのは当然だろう。
なんて態度では聖人君主でも受け入れるの難しくないかしら?
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