キミの恋のはじまりは
どくんっと心臓が大きく脈打って、急に息ができなくなる。
花島さんが差し出したかわいらしい紙袋を、なんの躊躇もなく受け取るその人。
受け取った紙袋の中をふたりで顔を寄せ合って覗き込む。
そうすれば、花島さんが眉を下げて可憐に唇に弧を描いて、人差し指でその人の胸元につんっと触れる。
……やめて。触らないで。
そう言えたらいいのに。
……私のだから、私だけの泉なんだから。
言えるわけない。
体中に黒いもやもやした見たくない感情が充満していく。
そのせいで呼吸がずっと苦しいままだ。
新鮮な空気が欲しくて吸い込むのに、私の中であっという間に汚れて黒々とした空気に変わってしまう。
頭の芯が痺れ視界がぼんやりとしてきて、もうふたりを見ていられなくて、目をそらして遠ざかった。
滑り込んできた電車を見送れば、もうホームにふたりの姿はなかった。
泉が、花島さんからのチョコを受け取った。
今日聞いた葉山さんの言葉が頭の中に警告音のように響き続ける。
いままで全部を断っていた泉が。
―――――― 花島さんのチョコだけ、受け取った。