真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される


雅人くんは、彼らの母親が亡くなった時、林にいろいろ世話になったことを覚えていた。
名刺を差し出し久しぶりだと挨拶を交わした後、大事な話がありますと家に上げてもらった。

優菜は子供を連れて買い物に出ているらしく、家には雅人くん一人が留守番をしていた。

彼女と出会った経緯や、半年間一緒に暮らしていたことを彼に伝えた。

「優菜から父親のことは何も聞いていなかったんです。あいつが話そうとしなかったので、てっきり不倫か、もしくは水商売で出会った遊び人かなんかで、子供ができたことを話せないまま、どうしようもなくなって僕を頼ったんだと思っていました」

僕は頷いた。

「優菜の気持ちは妹にしか分からないものです。事実だけを見ると、あいつはひとりで子供を産み育てるという決心をした。ただそれだけです」

雅人くんの言うとおりだった。

「おっしゃる通りです。ですので、今回彼女と二人で話をさせていただきたい」

僕は雅人くんに頭を下げた。

「どうぞ頭を上げてください。僕は、人は間違うものだと思っています。失敗することがあって当たり前で、間違えない人間なんてこの世にはいないと思っています。なのでこれからそれを正せばいいと思います」

雅人くんは、自分も今までたくさん間違えた。そして妹にもたくさん迷惑をかけた。今それを償っているところですと付け加えた。

「子供を彼女と一緒に育てることを第一の目標と考えています。もしそれが叶わなちのであれば認知をさせていただきたい」

「あのお考えは十分伝わりました。けれどひとつ問題があります」

とても大きな問題ですと彼は言った。



それから彼が言う事の意味を林が理解するのに時間はかからなかった。

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