掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
拓郎への気持ち
拓郎の凱旋には驚いたけれど、心から感動している自分がいた。

未来科学館の学芸員になることも、論文のアクセプトも、全部、全部、嬉しかった。

正直に言うと、拓郎との再会を想像しなかったわけじゃない。

実家は隣同士なんだし、いつかきっと会うことはわかっていた。

だから姉から話を聞いた時は、ついに来たか……と心構えもした。

まさかこんなに突然だとは思わなかったけど。

再会した時、私は拓郎のことをどう思うだろうか……。
自分の中に気持ちが残っているとは思わなかったけれど、実際に会ってみないとわからないと、不安な私がいた事は否定出来ない。

でも、私の心は1ミリも動かなかった。

久しぶりに会った拓郎は、しばらく会わなかった兄のようで、楽しかった思い出をたくさん共有する相手……つまりは幼馴染という存在、ただそれだけだった。

そして私の隣にいるのは、ずっと変わらず淳之介で、ただ傍に居てくれるだけで心強くて、愛しい存在だった。

4年半という月日は、今の私たちをあるべき場所に落ち着かせてくれた。

何が正しかったのかは、今、私達がどう思っているのかで決まるのだ。

私は今、淳之介の傍に居ることが最大の幸せ。そして彼の子供を身ごもっている事が最大の喜びだ。

この喜びの全てが、淳之介の優しさから始まっているのだと思うと、感謝しかない。




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