掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜

夏祭り

母に着付けをしてもらって和室を出ると、夏期講習に行っているはずの兄と京くんが何故かうちの中にいた。

「あれ? お兄ちゃん達、夏期講習は?」

「……京が写真を撮るってうるさいから、一瞬だけ家に寄った。
撮り終わったら直ぐに出るよ」

なるほど……

京くん、お姉ちゃんが大好きだもんね。
新調した浴衣姿なんて、絶対に見逃せないはずだわ。

「泉、次は後ろ向いて!」

「はーい」

姉は浴衣としては大胆な、向日葵色に黒白モノトーンの蓮の花が咲いている浴衣に、真っ白な帯を締めている。

五島列島出身の女優さんにそっくりだとよく言われる姉にしか着こなせないような取り合わせだ。
とっても粋でよく似合っている。

それにしても、お姉ちゃんも大変ね…

「新しい浴衣、良いじゃないか」

「え?…… そう?」

「ああ。水色は環によく似合うよ」

新調した浴衣は水色地に淡いピンクと紫の朝顔柄の浴衣で、ふじ色の帯を締めている。
環にはこれが良く似合うと、姉とナコちゃんが選んでくれたものだ。

「へへへ。ありがとう」

兄は口数の少ない分、喋る言葉に重みがある。だから褒められると素直に嬉しい。

その後、京くんはお姉ちゃんと私の写真を撮ってやっと満足したのか、お兄ちゃんに引き摺られるように去っていった。

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