オネエさんとOL
 高い女子力にくらくらしながらも、空腹も手伝って、ふわふわブリと野菜とキノコと豆腐をかみしめる。白菜は甘いし、ブリは柔らかで、塩糀のおかげなのかうまみがじゅわっとあふれる。そこに玄米を一口入れたら、電気が走ったように体が痺れた。

「何これおいしい! 玄米だよね? もちもち!」

「ご飯は冷凍してあったやつだけど、ミルキークイーンっていってもち米みたいな品種なのよ。冷めてももちもちだし。有名銘柄より好きなのよね。あと玄米のほうが食感がぷちぷちしてるから好きなの。たまにもみ殻入ってるけど」

 世の中にはそんな品種のお米があるのか、と打ちひしがれつつも、ブリ鍋のうまみともちもち玄米の甘さで、『これ以上おいしい夕食はこの世にはないのでは?』と思えるほどだった。

「おいしい。林ちゃん天才!」

「もっとほめてもいいのよ。何も出ないけど」

 林太郎の不敵な微笑みが可愛くて、おいしいご飯をお腹いっぱい食べて、とても温かくなった。



 腕時計を見たら、二十一時を回っていた。ご飯を食べて、話をしていたらあっという間だった。

「林ちゃん、もうそろそろ帰るね。ごちそうさまでした」

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