初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

「謝って下さい、リエラさん! そうすれば私はあなたを許しますから!」
「──へっ?」
 思わず素っ頓狂な声が出る。

 え、何を? 何から? 何で?

 頭の中でクエスチョンマークが飛び交うリエラを、どう勘違いしたのか、クララは胸に手を当てて目を更に潤ませた。
 ……零れないの凄い。
 なんて場違いな感想が頭を過る。

「伯爵令嬢ごときが、将来の王子妃となる私に対する非礼の数々……今なら許して差し上げます! だからどうか、謝って!」

 う、わ。
 
 拳を握った力説に心身共にドン引きする。
(盛大に勘違いしてるよ! 誰なの、この子にこんな事吹き込んだのは!)

「ああ、クララは何て優しいんだ。素晴らしい。君は既に王家に連なる者としての資質を兼ね揃えているね」
「えへへ」
 
 お前か!
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