初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 そもそも平民の陳述には手順がある。いくら貴族同伴とは言えそれは変わらないし、そもそも二人が行おうとしていた国王陛下への謁見には、貴族だろうと手順がある事には変わりない。
(それを約束もとりつけずに乗り込んで来て、会えないのはお前のせいだとか、意味が分からないわよ)

 大体リエラでも知っているような事を伯爵家嫡男であるアッシュは知らないとか、一体全体どういう了見なんだろうか。
 あらゆる発言についていけず混乱するリエラを他所に、クララは尚も言い募った。

「私が王族の彼と一緒だからって理不尽にも嫉妬されたのです! 貴族の女性が意地悪なのはアッシュから聞いていましたが、あんまりですわ! 挙句に暴力まで奮って……ご覧になったでしょう? リエラさんはアッシュに手を出した犯罪者なんです! どうぞ捕まえて下さいませ!」

 言葉の後にクララの瞳から涙がポロポロ溢れてきた。
 それを見てリエラの胸は不安に騒いだ。
 倒れているセドリー令息、涙を流すクララ。リエラを嫌うシェイド。

(これは……悪条件が重なり過ぎているのでは?)
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