初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 ベリンダと取り巻きたちは言われた事が理解できなかったらしく、一瞬だけぽかんとした後、その面を鬼のように変貌させた。

「なっ、お前……平民のくせに! わたくしに何て言葉遣いなのかしら? この事はお父様にお伝えさせて頂きますからね!」
 ぴしりと指を突き立てられ、ウォム医師は不愉快そうに顔を顰めた。
 
「──いいえ、レーゼント侯爵に伝えて恥をかくのはあなたですわ、ベリンダ侯爵令嬢」
 
 その言葉に皆の視線が一斉にリエラに向く。
 シェイドも目を見開いている。
 けれどそれを受け、リエラはしゃんと背を伸ばした。
 淑女教育はちゃんと完了している。シェイドの前でみっともない姿は見せたくなかった。

 それに先程からベリンダの態度が目に余って仕方がない。
 気付けば口を出していた。
(彼女の暴言を聞き捨てならないなんて……私って案外面倒な性格をしているのかもね)
 リエラは内心でひっそりと息を吐いた。
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