初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

「……はあ」

 酷い脱力感に苛まれ、リエラは肩を落とした。

「ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません」
 ウォム医師に頭を下げれば、いいえと首を横に振られた。

「とんでもないことでございます。頼もしかったですよ。それに私共の仕事を理解して頂いてありがとうございます」
 優しい眼差しに思わず眉が下がる。

「力不足で申し訳ありませんわ。本当はベリンダ様に謝って頂きたかったのに……追い出すのがやっとで、それすらシェイド様にお手伝いして頂いてですもの」
 
 面目ないなと思う。
(先王の名前やクライド殿下の名前を出したりして……私だって所詮、虎の威を借る狐だった)
 自分一人ではこの程度だ。
 けれどウォム医師は目元を和らげてにっこりとした。

「充分ですよ、我々の為に立ち上がって頂いて本当に心強かった。流石リエラ嬢。クライド殿下の婚約者候補の筆頭ですね」
< 58 / 94 >

この作品をシェア

pagetop