初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 ……しかしリエラはとは言うと、望まぬ相手に声を掛けられた時の異性の反応を知ってしまっているせいか、臆病だった。

 痺れを切らした兄に、何度も「婚活をサボっている」と叱責された。
 リエラとしても、そんな事は分かっているのだが、結局一歩踏み出せないままでいた。
(十六歳のデビュタントでは何とかパートナーを引き受けてくれたけれど……)

 これ以上はもう無理だろう。
 当面、パートナーが必要な夜会に参加する予定は無いが、もう引き受けて貰えるとは思えない。
 そしていい加減、痺れを切らした兄に片っ端から見合いを申し込まれそうになっていた。
 
「お兄様、私の事は政治利用していただいて構いませんから」
「それが甘えているっていうんだ! 自分の将来の相手なんだぞ! 一生の話を何故もっと真剣に考えられない?!」
「……」
 正論すぎて返す言葉もない。

 けれど、真っ直ぐに歩けば目的地に辿り着ける人たちに、自分の気持ちなんて分からないでしょうとも思ってしまうのだ。

「知ってるか、従妹のリサは侯爵家の嫡男と婚約を結んだんだぞ!」
「存じております」
「モニカは近衞騎士との結婚が決まった」
「花形ですわね」
「メイミは隣国の公爵家に見染められたんだ!」
「ドラマチックですわ」

(親族が皆ハイスペック過ぎて、余計に肩身が狭いわ……)

「なのにお前ときたら……」

 リエラはげんなりした。
「お兄様に任せますわ。適当に選んで下さいませ」

 また説教が始まると、リエラはこの話を早々に打ち切った。

< 7 / 94 >

この作品をシェア

pagetop