冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
予想外の妊娠



 七月に入ると、久し振りに地元に日帰りで帰省することになった。

 祖母の命日に合わせてお墓参りをするためだ。大学進学を機に上京してからも毎年この時期は祖母のお墓を訪ねるようにしていたので、結婚してからも続けたかった。

 ひとりで新幹線に乗って帰省しようとしていたけれど、急きょ充さんも一緒に来ることになったので車を出してくれた。

 東京から片道約二時間半。朝の早い時間に出発したので、午前十時には地元に到着。それから祖母のお墓のある場所に向かった。

 両親たちが定期的に訪れているようでお墓のまわりはきれいだ。持ってきた花を花立てに添えてからお線香をあげる。それから手を合わせれば、私の隣で充さんも同じように手を合わせた。

 結婚後に初めて訪れたこともあり、祖母に報告したいことがたくさんある。心の中で話し掛けていたら随分と長く手を合わせていたらしい。充さんに「菫」と声を掛けられてハッとなる。

 彼に促されて立ち上がろうとしたとき、なにかがチャリッと地面に落ちる音がした。先に気付いた充さんが手を伸ばして拾ってくれる。

「ネックレスだな。菫のだろ」
「あっ」

 とっさに自分の首もとを確認すると、いつも着けているネックレスがない。どうやら取れてしまったようだ。
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