冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 今日は六月二十日――充さんの三十六歳の誕生日だ。

 昨年は彼が風邪を引いてしまい、お祝いらしいことはできなかったから今年こそはと意気込んでいたのに大したことはできず。ケーキを買いに行く時間も取れなくて、夕食に昨年と同じビーフシチューを作るのが精一杯だった。

「すみません。プレゼントも用意できなくて」

 ビーフシチューとケーキを食べ終えた頃、私はしょんぼりと肩を落としながら彼に告げた。

 三月の私の誕生日のときは、出産を頑張った私に〝お疲れ様〟という意味も込めて充さんは、マザーオブパールを使った四つ葉のクローバーの形をしたネックレスと、蝶の形をしたピアスをプレゼントしてくれた。

 パワーストーンとして人気だが、母性の象徴とも言われており子育てのお守りとしての価値もあるのだとか。

 綾芽ちゃんが言うにはこのブランドだとどちらも三十万は確実に超えているそうだ。金額で愛情は図れないけれど『愛されてるのね~』と茶化されたことを思い出す。

 それなのに私は充さんの誕生日にビーフシチューを作っただけ。しかも昨年よりも手を抜いてしまった自覚がある。

 来年こそは頑張りたいと反省していると、充さんが口もとに優しい笑みを浮かべた。
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