冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「――そうか。わかった」

 しばらくして充さんが呟く。すると、険しい表情を浮かべたまま長い脚を前に進めて、こちらに向かって歩いてきた。

「えっ、なんですか」

 キッチンまであっという間に戻ってきた充さんが、私の目の前でぴたりと足を止める。

 私の視線の先には彼が着ている紺色の半袖トップスがあり、服の上からでもわかる鍛えられた体つきに思わずドキッとした。

 肘から手首にかけて引き締まった逞しい腕と、少し目線を上に向けると男らしい喉ぼとけが目に入り、私の心臓はよりいっそうバクバクとうるさくなる。

 けれど、この状況はときめきを感じている場合ではなさそうだ。

 充さんの眉間の皺はいつもよりも深く、表情はいつにも増して険しい。あきらかに怒っている様子に、背中にヒヤリと冷や汗が伝った。

 やはり言いすぎたのだろうか。でも、私は日頃の不満をほんの少しぶつけただけ。

 それでも明らかに不機嫌な充さんにすっかり怯えてしまい、足が一歩後ろに下がる。けれど、背後にある冷蔵庫が邪魔をして、これ以上は逃げ場がない。

 固くてひんやりとした冷蔵庫に私の背中がぴったりとくっついた。
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