傷だらけの黒猫総長




「そう……。僕、君みたいな不良は嫌いなんだ。君が何をしようと勝手だけど、苑香さんに迷惑をかけないようにしてくれるかな?」


「お、逢見くん……!」




冷酷に告げる逢見くんに対して、黒羽くんは一瞥を返すと、おろおろしているわたしの手を引く。




「何が迷惑かは“苑香”が決める。喧嘩なら、別の機会に売ってこい」


「なっ」


「え? く、黒羽くん……!?」




引っ張られるままに歩くと、黒羽くんは少し振り返って「悪い」と申し訳なさそうな目をする。


わたしが困ってたから、連れ出してくれたのかな……?


名前を呼ばれる機会だけでも貴重なのに、そんな目をされたら、また心臓が変になる。




「……逢見くん、ごめんね! また後で!」


「苑香さん……!」




逢見くんは伸ばしかけた手をグッと握りしめて、黒羽くんの背中を睨んだ。


2人の相性がここまで悪かったなんて、残念だな……。



< 106 / 283 >

この作品をシェア

pagetop