傷だらけの黒猫総長




「それでは、失礼する」




淡々と言ってリビングを後にしたお父さんの背中が見えなくなると、わしゃわしゃーっとわたしの頭が撫でられる。

驚いて顔を上げれば、隣に詠二お兄ちゃんがいた。




「あいつを説得しちまうなんてすげぇな。俺がずっとやりたくて、でもできなかったことだ。……ありがとな、苑香」




温かい笑みを浮かべて、深い想いのこもった感謝の言葉を告げられ、わたしも笑顔で応える。




「みんなのおかげです」


「そのちゃーんっ! ほんとにほんとにありがとう!! もう“天使”じゃ足りないよっ!」


「僕からも、ありがとう。期待以上の結果だよ」


「若菜ちゃん、矢吹先輩……」




ぎゅーっと抱き着いてきた若菜ちゃんと、いつも通りの優しい微笑みを浮かべた矢吹先輩にもお礼を言われて、頬が緩んだ。


間違いなく、わたしにできる最善をやりきった。

その結果が、みんなの笑顔。

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