追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
「――――本当に愛の力は偉大ですね、ヘレナ様」

「へっ……? えぇと――――そうなの、レイ?」


 僕のセリフに、ヘレナ様は躊躇いがちにレイモンド様を見つめる。すると、レイモンド様は穏やかに目を細めつつ、ヘレナ様の手を握った。
 その途端、応接室に甘ったるい空気が流れ始める。やばい。既に胸やけがしてきた。それなのに、レイモンド様は至極嬉しそうに微笑みながら、ヘレナ様へと顔を近づけていく。


「ヘレナ様はどう思われるんですか?」


 それは、一体どこから出してるんだろうと思うぐらい、ゾクゾクと心と身体を震わせる声音だった。僕が女の子だったら腰が砕けてたんじゃないかな! ヘレナ様も真っ赤になっていらっしゃるし、絶対確信犯だよね。


「……そんなの、分かってる癖に」


 そう言ってヘレナ様はそっと唇を尖らせる。
 あっ、これはヘレナ様、僕の存在を忘れかけてますよね。完全に二人だけの世界に移行しようとしてますよね!?
 いや、仕方がないとは思うんです。レイモンド様がそういう風に仕向けてますし。何なら見せつけたいんでしょうし。
 だけど、二人がラブラブだってことはもう十分分かりましたから!これからも伝令役として出来る限りのことはさせていただきますし、結婚式の時とか全力で協力させていただきますから!


「――――そろそろお引き取りいただけますか?」


 何とも冷たいセリフ。だけど、僕は大きく目を瞠った。
 かつての主人、レイモンド様があまりにも幸せそうな表情で笑っている。十年前、僕はレイモンド様のこんな顔が見られる日が来るとは思っていなかった。いつだって悲し気な、苦し気な――――そんな表情をしていらっしゃったというのに。


(本当に、幸せになられたんですね)


 途端に胸が熱くなり、僕は思わず小さな笑い声を零す。


「大変、お邪魔しましたっ!」


 僕の言葉にレイモンド様は至極優しく目を細めた。
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