課長に恋してます!
「血のつながりがない私を娘にしてくれてありがとう。ずっと言いたかったの」

 葵が恥ずかしそうに笑った。

「……知ってたのか」
「私、お父さんに会った日の事、ちゃんと覚えてるよ。頭なでなでしてくれて、『葵ちゃん、友だちになってくれる?』って言ってくれたよね」

 初めて葵に会ったのは葵が二才の時だった。
 ゆり子に連れられて、不安そうにこっちを見てた。

「あんな昔の事、覚えてたんだ」
「記憶力いいでしょ」
「良すぎる」

 ずっとわかってて、葵は一緒にいてくれたんだ。
 そう思ったら、ありがたくて、ありがたくて……。
 じわりと目頭が熱くなった。

「お父さん、なんで泣いてるの?」
「泣いてない」
「もうしょうがないわね、はい」

 葵からティッシュを渡され、それで涙を拭った。

「お父さんて涙もろいんだよね。結婚式もバージンロード歩く練習の時からいきなり泣いてたよね」
「泣いてない」
「泣いてたよ」
「泣いてない」
「泣いてた」

 葵がコロコロと明るい声で笑った。

「お父さん、素直になった方がいいよ。好きな人に逃げられちゃうよ」

 似たような事を間宮君にも言われた。

「何言ってんだ。お父さんはもう49だぞ」
「年なんて関係ないよ。それを一番知ってるでしょ?」
「生意気な事を言うようになったな」

 葵と顔を見合わせて笑った。
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