課長に恋してます!

7 家に来ませんか? 【美月】

「家に来ませんか?」

 別れ際、ありったけの勇気を振り絞って、そう言った。
 課長は目を丸くし、戸惑ったようにこっちを見ていた。

 このまま離れたくなくて課長を引き留めたけど、唐突だったかな。

「あ、あの。お弁当箱」
「お弁当箱?」
「課長が差し入れてくれたお弁当箱が家に置いたままなんです。だから」

 もじもじと両手を重ねていると、課長が口の端を上げて笑う。

「弁当箱なんていいよ。君にあげるから」
「そういう訳にはいきません! ちゃんと洗ったんですよ。持って帰って下さい」
「しかし、もう遅いし」

 確かに遅い時間だけど……。

「課長を襲ったりしませんから! 絶対に襲いませんから!」

 課長が眉を上げた唖然とした顔をした。

 往生際が悪いのはわかってる。
 でも、これが課長と一緒にいられる最後だから、もう少しだけ一緒にいたい。

「一瀬君、声が大きいよ」
「お願いです。家に来て下さい」

 深く頭を下げた。

「一瀬君、わかったから。頭を上げなさい」

 顔を上げると、小さな笑みを浮かべた課長がいた。
 胸に沁みるような優しい表情に、胸がドキンッて鳴る。

 課長が好き。
 昨日、失恋したばかりだけど、やっぱり好きが溢れる。
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