課長に恋してます!
 駅に着くと課長と一緒に降りた。

「少し休憩しようか」と言われ、ホームのベンチに座る。
 
 正直助かった。このまま会社に行く気力も、どこか適当な店に入る気力もない。

「良かったら、どうぞ」  

 隣に座った課長がコートのポケットから缶コーヒーを取り出した。

「会社で飲もうと思って、さっき買ったんだ。まだ温かいから」  

 渡された缶コーヒーの温かさに、ホッと心が緩む。こういう気づかいが出来る人なんだ。だから、いいんだ。

「何かすみません」  

 課長の優しさに胸が痛くなる。
 あんなことをしたのに、課長は何もなかったような顔をしている。

「いいんだよ。僕もこうしたかったから」

 穏やかな顔をした課長が、いつも通り過ぎて痛い。

「ちょっとくたびれたよ。正月ボケかな」

 課長があははと笑った。

 あんな事があっても課長は気楽に笑えるんだ。
 私の事なんて、何とも思ってないんだ。

 課長の隣にいるのに、悲しくなった。

「先に行って下さい。本当にもう大丈夫ですから」

 普段通りに言ってるつもりなのに、声がちょっだけ震えた。

「本当にもう大丈夫ですから」
「僕が邪魔?」
「え?」
「僕の顔なんて見たくないよな」
「いえ、そんな……」

 顔を上げると、眉尻を下げた、困ったような二重瞼の目と合った。
< 6 / 174 >

この作品をシェア

pagetop