秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
・・確かに、それは俺じゃないかもしれない。

一度も、桜の口からそんな話を聞いたことが無かった。


『ひとりの女性として、誰かを支えて生きてみたくなって』


そんな・・。


「お前たち、てっきり付き合っているものだと・・」

「いろいろあって、別れてくれと言ったんだ。その後、関係は修復したつもりだったけど、はっきり伝えてはいなくて」

「・・まだ、間に合うんじゃないでしょうか・・」


部屋の隅から声がした。


「なんだ西川、まだここにいたのか。まぁいい、間に合うとはどういう意味だ? 言ってみろ」

「はい・・おふたりには何度かお目にかかってますが、愛し合っています。断言できます!
それだけじゃないです。お互いに尊敬もされていて、本当に素敵なおふたりなんです。
専務が一歩踏み出せば、絶対に間に合います!」


早く行ってください、と西川は文字通り俺の背中を押し、会長室の外に押し出した。

廊下に桜の姿は見えない。
もう階下に降りただろうか。


俺は、エントランスに降りるエレベーターの中で考えていた。


桜を見つけて何を言うつもりだ・・。

言いたいことと聞きたいことが頭の中をぐるぐる回っている状態で、エレベーターは1階に着く。

開いたドアの向こうに、桜の後ろ姿が見えた。


そして桜の横には、兄貴が、いた。
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