秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「藤澤様がお見えです」


室長に呼ばれて桜は応接室に行き、30分ほどで戻ってきた。


「はぁーーーっ、疲れた〜」


珍しく、ドスンと社長室のソファに座り込んだ。


「粘られたか?」

「だいぶねぇーーー」

「愛情にグラッときた?」

「むしろイラッとした〜。アハハ」


もう、俺の出る幕は無いな。
午後の銀行との話し合いも、問題無いだろう。

そんな俺を見透かしてか、桜が尋ねてきた。


「ねぇ直生・・これからどうするつもり?」

「どうする・・って?」

「だって、もう『秘書』やらないでしょ?」

「そう・・だな」

「『専務』に専念する?」


それもどうかなと思った。

これまでとペースが変わったら、きっと部下たちも困るだろうし、兄貴だってやりづらいだろうから。


俺の居場所・・・・。


少し前に感じていた迷いが蘇ってくる。

『俺のことは、どうとでもなる』

確かに、そうなのだが。


「桜は、俺にどうしてほしいとか、ある?」


自分では答えが浮かばず、思わず桜に尋ねた。


「あるけど・・それでいいのか分からないから、もう少し考えてみるわ」


そう言って、桜も答えを避けた。
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