身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
 さすがの神父様も少し慌て始めた。何だか寒さに震えて体調も悪そうだ。神父様の顔がみるみる真っ青になっていくのが分かる。大丈夫かしら?
 執事らしき初老の男性に目配せをして、まだかまだかと催促している神父様。

 かれこれ一時間ほど経っても、旦那様らしき男性が現れる様子はない。
 待つのも疲れ切って、もう帰っていいですかと言いかけたその時、長椅子に腰かけて呆然と待つ私に神父様が言った。

「……ソフィ・ヴァレリー、あなたはリカルド・シャゼルを夫として生涯愛することを誓いますか」
「は?」
「新郎が来ませんので、とりあえず貴女様だけでもと思いまして……」
「わ、分かりました。とりあえず愛することを誓いますから、屋敷に戻って着替えてもいいですか? あと、私はソフィではなくリゼットです」
「…………」

 神父様はよほど寒さにやられて体調が悪くなったのか、私の言葉を聞きながら床に倒れ込んだ。その辺にいる騎士様たちが駆け寄り、神父様の介抱を始める。

 もう、自分が想像し得る中で、最悪の結婚式だった。
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