身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
「……ごめんなさい、私ちょっとよく分からなくて。とりあえず、私も今日は結構大変な状況ですので、あとはお二人でごゆっくりケンカなさってください。このまま失礼させていただいてよろしいでしょうか?」

「リゼット、帰るのか?! ちょっと待ってくれ、話したいことがあるんだ……」

「あの、今日は色々あり過ぎて、私も頭を整理したいのでまた後日」


 何だかお二人は仲良く言い合いしているけど、私の心はそれどころではない。お母様のところに早く戻って、どうしてもこれまでのことを報告して謝りたい。それに倒れたお父様も何とかしなければいけないし、ソフィのことだって話し合わなければいけない。

 ……それに、一体何なの?

 『カレン様のことを好きというのは間違いだ』とか、『ユーリ様が私へのラブレターを一晩中悩みながら書いていた』とか。これ以上の情報が私の頭の中に入ってきたら、頭が爆発してしまいそうだ。きっと今、私の顔はユーリ様と同じように真っ赤なんだと思う。

 私にユーリ様の気持ちを期待させるようなことを言わないで! この火照る顔を見られる前に、早くここから出て家に帰りたい。


「リゼット、頼む! 少しだけでいいから話を」


 ユーリ様が、部屋を出ようとした私の手をつかむ。私は、ユーリ様の手のあまりの熱さに驚いた。


「ユーリ様、手がすごく熱いです! 熱があるのではないですか?」


 私が言葉を言い終わる前に、ユーリ様は眉をしかめながらゆっくりと目を閉じた。倒れてきたユーリ様を思わず正面から受け止めて、一緒に床に座り込む。

 ユーリ様の背中に回した手に、ぬるっとした感触。これは……


(……血?)


「リカルド様! ユーリ様の背中、ケガをなさってませんか?」

「ユーリ! まさか魔獣との戦いのケガか?! 傷が開いたのかもしれない。人を呼ぼう!」

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