身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
 本当は私だって新しい家族が欲しかった。事前に噂は色々聞いていたし、望みが薄いことは分かっていた。だけど、こうして結婚式にも初夜にも現れない相手だと知り、寂しい気持ちがしないと言えば嘘になる。
 
 ああ、何だかこの屋敷にいると仕事もないし暇だから、考えごとばかりしてしまうわね。
 長旅の疲れもあるし、旦那様はきっと来ないし、早く寝てしまおう。

 そうして、窓の鍵が壊れていないか入念にチェックしながら気が付いた。普通の屋敷では、鍵が壊されているわけがないのだ。

 まさか、もう夜中怯えながら寝る必要がこともないのかも……これは想定外の幸運!
 旦那様が結婚式に来なかったことは多少はショックだったけど、こんな思わぬいいことがあるなんて!

 ロンベルクでの生活は幸先よくスタートだ。そんな幸せな気持ちで、眠ろうと寝台に腰かけたその時。


 ……旦那様らしき人が寝室にやって来たのだった。


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