失われた断片・グラスとリチャード
いつも、おどおどして、緊張しているようで、
すぐに逃げられるように・・
まるで小動物のようだが・・

今は無防備で、よほど疲れているのか、
少し口を開けて、熟睡している。

コトン
膝から、本が滑り落ちた。
何を読んでいたのか?

リチャードは、杖を置いて、
床に膝をつき、グラスの膝に
置いてあった本をそっと取った。

<ギリシア・ローマ神話>

ページを、パラパラとめくりながら、リチャードは、手を顎に当てて、考えていた。

そもそも、
グラスは文字が読めるのか?
古代神話に、なぜ興味があるのか?

「ん・・・」
グラスの目が、少し開いて、

次に、目の前にかがんでいる、
自分の主人の姿に、驚いたように見開かれた。

「だだ・・旦那様!!」

グラスは背中をぴったりと、壁にはりつかせて、
肩が上がり、その指は、カーテンを握りしめた。

「もも・・申し訳ありません!!」

蛇に睨まれた、カエル状態だ。
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