失われた断片・グラスとリチャード
リチャードが、
つる草の巻いてある、左手の指をかざすように、空を見上げた。

「私は神が嫌いだが、永遠の愛を誓うためには、
神に証人になってもらわないと困る」

グレイスが答えた。
「証人は、バード夫妻ですよね」

その答えを聞いて、
リチャードは、声を立てて笑った。

グレイスも、
左手のつる草の結び目がほどけないように、右手の指で押さえた。

それを見て、リチャードは
「グラス・グレイス・グリーン・グロスター、いい名前だ。
すべてGでそろっている。」

ふたりは、顔を見合わせて笑った。

チュン、チュン、ピピーー

木々の間から、鳥たちが、
祝福のさえずりを、死神と死霊に、投げかけていた。

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