俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「お前が彼を連れてきた日、お母さんもここへ来ただろう? あの後、またひとりで店に乗り込んできて説教された。『光里はあなたの背中を見てきたから整備士になったのに、いつまでひとりで拗ねてるんだ』って。美人が怒るとおっかないよなぁ。だけどそのおかげで、自分の情けなさにやっと気づいてさ」

 父はそっと体を離し、苦笑しながら頭を掻いた。

 そうか、お母さんがお父さんを説得してくれたんだ……。

 離婚してもなお両親の力関係が変わっていないことが、娘としてはなんだか微笑ましい。

 そしてそれ以上に、離れて暮らしていてもいつだって私の味方であり続けてくれる母の大らかな愛情に、深い感謝を抱いた。

「お前が整備士で旦那がパイロットとなると、生活リズムは合わないしやっぱり苦労はすると思うけど、光里は俺よりずっと優しくて根性もあるから、幸せになれるって信じてる。もちろん、ここもお前の家だからいつでも帰ってきていいんだからな」

 ポンと肩に手を置き、父がにっこり笑う。私もつられたように口元を緩ませた。

「ありがとう。行ってくるね」

 小さなセスナ機を大事に抱え、父に別れを告げる。

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