ひと夏のキセキ
遥輝は、そんな葛藤を抱えながら私と接していたんだ。


肉親を二人も亡くした心の傷はそう簡単に癒えなくて、一歩を踏み出すのが怖くて。


私までもがいなくなってしまうことが怖くて。


だけど、それでもたくさん愛を注いでくれていた。
 

どこまで優しい人なんだろう。


私のことなんか無視して自分を守ればいいのに。


何も言わず一方的に私と距離をとればいいのに。


「…遥輝はバカだね」   


もっと早く距離をとってくれていれば、私はここまで遥輝を好きになることはなかった。
 

諦めもついた。


だけど、もう遅いんだもん。


私はどうしようもないくらい遥輝が好き。


遥輝のことが大好きだよ…。


でも私は…。


私は…っ。


夏が終わる頃には死ぬ。


遥輝の前からいなくなってしまう。


遥輝が恐れてることが起こってしまう。
< 128 / 353 >

この作品をシェア

pagetop