ひと夏のキセキ
甲高い声が頭に響いてガンガンする。


お母さんに背を向けて布団を被ると、またため息が聞こえてきた。


「お願いだから無茶しないで。私は絢に少しでも長く生きてほしいの」


「わかってるよ。わかってるけど…」


どうしても遥輝とお祭りを楽しみたかった。


想い出を作りたかった。


だって、もう長くは生きられないから。


このまま死んでいくのなら、何もしないで死ぬより少しでも良い想い出を増やしてから死にたい。


それが寿命を削ることになるとしても、私は別に構わない。


でもこの気持ちは、健康なお母さんには分からない。


「遥輝くんなら信用できるかと思って絢のことを任せたけど、結局―」


「遥輝のことは悪く言わないで。遥輝は関係ないでしょ」


遥輝はずっと心配してくれていた。


その気遣いを振り切って無理したのは私。


遥輝は何も悪くない。
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