ひと夏のキセキ
第3章

頼み


涙に暮れる毎日を過ごしているせいか、最近身体の衰弱を顕著に感じる。


立ち上がることさえできなくて、一日中ベッドにいることが増えた。


面会謝絶にしてから何日経っただろう。


今日は遥輝のお誕生日だ。


意識しないようにしていたのに、嫌でも思い出してしまう。


元気にしてるかな…。


苦しくないかな…。


過去を思い出して自分を責めてないかな…。


【お誕生日おめでとう】


このたった一文を送信する勇気がなく、書いては消してを繰り返している。


【絢ー、会いに行かせてよ。だめ?】


葵からは毎日連絡が来ているけど、返す答えはいつも同じ。


【体調悪いから。ごめん】


嘘ではない。


今は人と話すこともしんどいくらい心身共に疲れている。
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