ひと夏のキセキ
「ふぅ……」


明日、アメリカへ向けて出発する。


今日が日本最後の日になるかもしれない。


そう思うと怖くて震えが止まらない。


もし渡航中に容態が悪化したら、帰ってこれないかもしれない。


アメリカで急変するかもしれない。


慣れない環境に馴染めず、寿命が縮まるかもしれない。


「怖い…」


死にたくない。


そう思わせた遥輝はズルい。


死ぬことなんて怖くなかったはずなのに。


いつから私は死に怯えるようになったんだろう。


助かる可能性を知って、余計に強く死にたくないと願ってしまう。


もし元気になれば遥輝とまた笑い合えるかもしれないから。


傷つけてごめんなさいってきちんと謝って、1からやり直したい。


でも、もう二度と会えないかもしれないんだ。


もう会わないと決めたのは私なのに、また会いたいだなんて身勝手にも程があるよね…。


でもね…、好きだよ、遥輝…。


こんな私でごめんね…。
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