ひと夏のキセキ
離れたくない。


最後かもしれないなんて思いたくないけど、でも…。


可能性はゼロではない。


「…大丈夫だよ。その指輪、お守りだから。それをしてる限りは絶対死なない」


「……エスパーだね」


最後の最後まで遥輝は遥輝だ。


独占欲が強いところ、照れると口が悪くなるところ、人の心を読んで寄り添ってくれるところ。


全部全部大好きだよ。


「絢ー、そろそろ時間よ」


タイムリミットだ。


もう本当にお別れ。


「絶対、また会おう。約束な」


「うん、約束」


小指と小指を絡め、約束を交わす。


「キスしていい?」


「えっ!?だめだよ…!」


人前では絶対にだめ!


断固拒否の姿勢を見せると、遥輝はクシャッと笑った。


「冗談だって。人前ではしねーよ。絢のキス顔を見ていいのは俺だけだから。だから代わりに…」


ぎゅっ…


短いハグ。


それでも、勇気とパワーをたくさん貰えるハグだった。


「頑張ってくるね。ありがとう、遥輝」


「うん。がんばれ。俺はずっと待ってるから。またな」


「うん。またね」


遥輝に手を振り、お母さんお父さんの方へ歩みを進める。


“またな”“またね”


そう。


私たちには“また”がある。


だから、もう振り返らない。


バイバイ、遥輝。


またいつか会おうね。


大好きだよ。


恥ずかしくて言えなかったけど、愛してるよ。
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