激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「ご遠慮させていただきます」
すっと大きく一歩後退し、安心な距離を取る。
そんな私の行動がおかしかったのか、香椎さんはクスッと笑った。
「ますます気に入った。これからよろしくな」
本当によろしくしていいものか。
余計そんな疑問に頭を悩ませてしまうけれど、香椎さんの落ち着き払った微笑を目にすると何も言い返せなくなる。
「後日、新居の手配が整ったらまた連絡する」
「わかり、ました」
歯切れの悪い私の返事にも香椎さんは微笑み、「じゃ」と軽い足取りで運転席へと乗り込んでいく。
そのまま車は発車して、私の前から走り去っていった。
車を見送り、アパートのエントランスに体を向けたところで思い出したように手で口を押さえる。
キス……今日だけで二度もされるなんて。
なにより、手を繋がれたり腰を抱かれたり、キスをしてきたり、今日会ってそんな展開があるなんて考えもしなかった。
どういうつもりかわからないけれど、完璧遊ばれているのは確か。
そうわかっているのに、ずっと鼓動の高鳴りが治まらない。
故障してしまったような自分に戸惑いながら、いそいそと自室の玄関を目指した。