断食魔女と肉食神官~拾った子供が聖女に選ばれた魔女のお話~

25.神官様は神官様です

 ふと見たら、わたし達の傍に人がいた。どうやら話しかけるタイミングを見計らっていたらしい。


(誰だろう?)


 振り向いたら、そこには先ほど挨拶したばかりの幼い王太子が居た。


「あっ、王子様だ!」


 マリアはそう言って、嬉しそうに笑う。

 御年十二歳の王太子にとって、六歳のマリアは幼すぎるのだろう。彼は苦笑をしながら、マリアの手をそっと握った。


「マリア、さっきはありがとう。
そろそろダンスの時間だから、迎えに来たんだ」


 声変わりしきっていない高い声は、聞いててなんだか心地よい。王族の割に偉そうじゃないというか、物腰の柔らかい印象を受ける。彼は相手に合わせてやるということができるタイプのようだ。


「ダンス! あたしね、今日のためにたくさん練習したんだ!」


 まるで満開の桜のように屈託のない笑みを浮かべたマリアを見つめながら、王太子はほんのりと頬を染める。


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