断食魔女と肉食神官~拾った子供が聖女に選ばれた魔女のお話~

38.あなたはわたしの――――

 マリアの母親は呆然と立ち尽くしていた。
 わたしはマリアのことを見つめつつ、大きく息を呑む。


「あたしのお母さんはジャンヌさんだもん! ジャンヌさんだけだもん!」


 その瞬間、目頭がぐっと熱くなった。マリアのことを抱き返しつつ、涙がポロポロとこぼれ落ちる。


「そんな……だけど…………」


 ゴニョゴニョと口ごもりながら、マリアの母親はぐいっと身を乗り出す。


「だけど! あなたを産んだのは間違いなく私なのよ! 今ここには居ないけれど、あなたにそっくりの姉だって居るわ。その子を見れば、あなたが私の子供だって誰の目にもハッキリするはずよ。私たちには切っても切れない、親子の縁があって――――」

「違うよ。マリアは森で生まれたんだもん」


 マリアはまるで諭すような声音で、そう口にする。


「桃から生まれた桃太郎とか、竹から生まれたかぐや姫みたいに、マリアは木の中で生まれて、それをジャンヌさんが見つけてくれたの。……ううん、ジャンヌさんに出会えるように、神様があたしをあの森に置いてくれたんだよ。
だから、マリアのお母さんはジャンヌさんだけ。
どれだけ顔が似ていても、あなたのことなんて知らないよ。誰がなんて言っても、絶対、ジャンヌさんがマリアのお母さんだもん! そう思って生きてきたんだもん!」

「マリア……」


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