断食魔女と肉食神官~拾った子供が聖女に選ばれた魔女のお話~

16.おばあさんの話を聞きました

 握手会会場――――もとい、参拝者を受け入れて以降の神殿の熱気は本当に凄まじかった。

 騎士たちが城内整理を行い、神官ごとに長い列が形成されていく。見ているだけでめまいがした。


「これ、午前中までに捌かないといけないんですよ」

「は? これ、全部」

「ええ。そういう決まりなんです」


 げんなりしているわたしを前に、神官様はくすりと笑う。
 とはいえ、一人ひとりに与えられた時間は流石に十秒とかではなく、最大で五分は取れるらしい。

 だけど、昼までの残り時間と、ここに居る人数なんかを冷静に計算すると……ね。明らかに足りないじゃんってなるわけで。


「大丈夫だよ、ジャンヌさん。常連さんはみんな、二十秒ぐらいお話して、すぐにバイバイするんだよ!」

「は?」


 なにそれ。わざわざ長い時間列に並ぶのに、敢えて短時間の握手――お祈りに甘んじるって、どういうこと?


「新しいお祈り事項のない人は、私達から神聖力を受け取るだけ。そちらの方がご利益が高いということになっているんです。
ですから、皆さんきっちり二十秒で去っていかれるんですよ。まあ、その分、一日に数回並ぶ猛者もいますけどね」

「――――ツッコミどころが多すぎます。『ご利益が高いということになっている』って……」


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