幸せな離婚
「優花はやりたいこととかないの?」
「私……たくさんの野菜を育てたい」
「野菜?」
頭に浮かんだのは、そんなに大きくない敷地できゅうりやナス、トマトなどの野菜を育てることだった。
ホームセンターに売っているレンガを使って手作りの花壇も作ってみたい。
「そう。家のプランターでトマトを作ったの。そしたら、なんかハマっちゃって」
「いいじゃん!できたらおすそ分けしてよ!」
「もちろんだよ。でも、素人が作ったトマトだし皮も固いし、酸っぱいかもよ?」
義母がそう言っていた。
「そういうのって味どうこうじゃなくない?優花が手塩にかけて大事に作ってくれた野菜だもん。なんでも嬉しいって」
あの人も……瀬戸さんも言葉は違えど同じようなことを言ってくれた。
健太郎も義母も、私の言葉をいつも否定する。それに慣れ過ぎてしまっていたのかもしれない。
否定されるたびにどんどん自信を無くして、言いたいことも言えず喉の奥に飲み下す。
そうしているうちに自分が何を言いたいのか、どうしたいのかが分からなくなっていた。
「ありがとう。絶対、おすそ分けするから」
目頭が熱くなってギュッと目をつぶると、ポンポンッと頭を叩かれた。
目を開いて薫に視線を向ける。
「あたしはいつだって優花の味方だよ」
「薫……」
「それと、経験者からのアドバイス。離婚したからって不幸せになるわけじゃない。幸せは自分の手で探し出して勝ち取れ、以上」
薫の言葉が渇いた土を潤す水のように心地よく胸の中に広がっていった。

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